【令和8年度税制改正】シニア世代向けこれからの相続と暮らしはどう変わる?
令和8年度税制改正大綱において、シニア世代の方が特に注意すべきポイントは以下の3つです。
①「教育資金の一括贈与」の特例が終了し、まとまった額を非課税で渡せなくなります。
②「貸付用不動産(アパートなど)」の評価ルールが厳しくなり、直前の節税対策が難しくなります。
③「事業承継」の計画提出期限が延長され、会社を譲る準備に少し余裕が生まれます。
これまでは、資産を多くお持ちの方が、亡くなる直前に不動産を買って税金を減らしたり、教育資金として多額の現金を子孫に囲い込んだりすることができました。
しかし、これでは不公平だという声があり、ルールが厳格化され、 一方で、意欲のある高齢者が働き続けられるよう、税金の負担を軽くする調整も行われています。
参考:「税制調査会 第27回 答申」
具体的な改正内容とデータ
① 教育資金の一括贈与:令和8年3月末で「廃止」
子や孫に最大1,500万円まで一括で非課税贈与できた制度ですが、令和8年3月31日をもって終了となります。
これまで: 銀行に専用口座を作り、一気に1,500万円渡しても非課税。
これから: 制度がなくなるため、期限後の贈与は通常の贈与税がかかります。
ただし、教育に必要な都度、親や祖父母が直接支払う場合は、これまで通り贈与税はかかりません。
参考:令和8年度税制改正の大綱(65ページ、「二資産課税、1教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」)
参考:国税庁 贈与税がかからない場合
② 貸付用不動産(アパート等)の評価見直し
相続直前にアパートを買って相続税を減らす「駆け込み対策」にメスが入ります。
改正点: 購入・新築から5年以内に相続が発生した場合、路線価ではなく「買った時の価格(時価)」に近い金額で評価されます。
目安: 時価の約80%程度での評価となり、これまでの路線価評価よりも税金が高くなるケースが増えます。
令和9年1月1日以降の相続から適用されますが、「すでに持っている物件」でも、亡くなった時に取得から5年経っていなければ対象になる可能性があるため注意が必要です。
参考:令和8年度税制改正の大綱(82ページ、「(4)相続税等の財産評価の適正化」)
③ 事業承継の「特例承継計画」提出期限が延長
経営環境が厳しい中で、まだ代替わりの準備ができていない中小企業を支えるため、国は特例を受けられる期限を延長することになりました。
会社の株を次世代に渡す際、本来ならかかる「贈与税」や「相続税」を猶予してもらう制度が「事業承継税制の特例措置」です。
この特例を受けるために、事前に都道府県へ提出しなければならない期限が延びたことになります。
変更前: 令和8年3月31日まで
変更後: 令和9年9月30日まで(1年6ヶ月の延長)
これにより、後継者選びや準備に時間をかけられるようになります。
参考:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
参考:令和8年度税制改正の大綱(14ページ、「3.地方の伸びしろの活用・暮らしの安定、(1)活力のある地方・中小企業の後押し」)
参考:国税庁「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」
まとめ:今からできるアクションは?
今回の改正は、「早めに対策を始めた人が得をし、直前の対策は厳しくなる」という傾向が強く表れています。
☆【教育資金】令和8年3月までに「贈与」の検討を
お孫さんの入学や進学を控えているなら、一括贈与の特例(1,500万円)が使える令和8年3月31日がタイムリミットです。
廃止される前に、「まとまった額を渡しておくか」をご家族で話し合っておきましょう。
☆【不動産】「5年」をキーワードに資産の棚卸しを
アパートなどの賃貸物件は、「買ってから5年経たないと節税効果が薄れる」という新ルールが始まります。
アパート経営を考えている方は、 1日でも早くスタートし、「5年タイマー」を回し始めましょう。
☆【会社経営者の方】延長された期限(令和9年9月末)を待たず、まずは「特例承継計画」の提出をしましょう。
今回お伝えしたのは令和8年度税制改正大綱をベースにした速報版です。
これから国会を通って正式決定されるため、細かい条件などは今後アップデートされる可能性があります。
情報のアップデートにはぜひ注目ください。