新設される「子ども・子育て支援金」とその影響
「また給与天引きが増えるの?」
最近、ニュースやSNSで耳にする機会の増えた「子ども・子育て支援金」。
令和8年4月から導入されるこの制度は、単に「お金が引かれる」だけでなく、立場によってその重みやタイミング、備えるポイントが異なります。
「法人(経営者)」、「個人事業主」、「個人(従業員)」それぞれの視点で、ポイントを解説いたします。
1. 「子ども・子育て支援金制度」とは?
「子ども・子育て支援金制度」は、子育てを社会全体で支えるための制度で、「子ども・子育て支援金」は、少子化対策の財源を確保するために、全世代が健康保険料と一緒に支払うお金のことです。
新しい税金を作るのではなく、今支払っている「健康保険料」に上乗せで令和8年4月分から徴収が開始されます。(会社員の方の多くは5月の給与から徴収が開始されます)
令和8年度の一人当たり平均月額は500円(被用者保険被保険者の場合)と試算されていますが、令和10年度見込み額では800円と段階的に引き上げられることになっています。
(実際の支援金額は年収によって前後します)
出典:こども家庭庁「子ども・子育て支援金に関する試算(医療保険加入者一人当たり平均月額)」
子ども・子育て支援金の使い道は子ども・子育て支援法に記載があり、児童手当やこども誰でも通園制度など、決められた6つの項目(下図の赤枠部分)以外には使うことができない仕組みになっています。
出典:note こども家庭庁公式アカウント「最近話題の「子ども・子育て支援金制度」について」
2. 【法人の視点】「支援金」は「社会保険料の値上げ」と同義
支援金は健康保険料に上乗せされ、「労使折半」となります。
つまり、従業員の給与から引かれる分と同額を、会社も負担することになり、実態は「法定福利費(社会保険料)の実質的な値上げ」となります。
令和8年度の負担額を例に考えてみます。
例:従業員20名の会社(支援金月額500円の場合)
従業員1人あたりの会社負担増:年間約6,000円
会社全体のコスト増:年間約120,000円増
また、前項でご案内した通り、被保険者1人あたりの会社負担も、令和10年度には平均800円に達し、令和8年度平均500円と比較すると1.6倍となります。
つまり、令和10年度には「全従業員数 × 800円」が毎月の法定福利費の上乗せ分としてキャッシュアウトしていくことになり、従業員が多いほど、年間での支出増は無視できない規模になります。
3. 【個人事業主の視点】国民健康保険料への上乗せ
自営業やフリーランスの方が加入する「国民健康保険」。
広い意味では社会保険の一部ですが、会社員の保険とは仕組みが大きく異なります。
会社員は会社が半分負担してくれますが、個人事業主は全額が自分の持ち出しとなります。
国民健康保険の場合、支援金の額は単なる「年収」だけでなく、自治体が決める「所得割(所得に応じた額)」や「均等割(世帯人数に応じた額)」などに応じて計算されます。
会社員(被用者保険)の令和8年度平均額である500円と比較すると、一人当たりの平均単価は200円と低く設定されていますが、国民健康保険には労使折半がないため、全額自己負担となります。
個人事業主の方が注意すべきなのは、国民健康保険には世帯人数に応じて加算される「均等割」などの仕組みがあるため、ご家族が多い世帯では、一人当たりの単価に人数を掛けた分だけインパクトが大きくなる点です。
また、保険額が変更になるのは、会社員より少し遅れて令和8年6月頃届く「国民健康保険料 納税通知書」からになります。
参考:こども家庭庁、子ども・子育て支援金制度について「医療保険制度ごとの年収別試算はこちら」
参考:こども家庭庁「医療保険制度ごとの年収別試算」
参考:新宿区、国民健康保険、保険料について「保険料の計算方法について」
詳しくは、お住まいの自治体のWEBサイトをご確認ください。
4. 【個人(従業員)の視点】手取りが実際に変更になるのは「5月の給与明細」
一般の会社員の方が確認すべきは、「実際に手取りが減るタイミング」と「段階的な負担増」です。
制度は令和8年4月開始ですが、被用者保険に加入されている方の場合、多くの会社は保険料を翌月徴収するため、実際に手取りが減るのは5月の給与明細からになるケースが大半です。
また、既にご説明した通り、健康保険料は労使折半であり、令和8年度の月額平均は500円なのに対し、令和10年度には月額平均800円に3年をかけて増えて行く見通しです。
(実際の金額は年収に応じて前後します)
現在、議論が進んでいる「年収103万円の壁」の引き上げですが、さらに基礎控除等が拡大されれば、所得税が減税されることになります。
子ども・子育て支援金の負担増を、この減税分が上回るケースも出てくるでしょう。
ただし、年収や世帯構成によってその損得ラインは異なります。
減税の恩恵よりも支援金が多くなる可能性もあるため、今後の動きに注目したいですね。
子ども・子育て支援金制度は、子育てを社会全体で支えるための制度であり、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、日本の少子化状況を反転できるかどうかの重要な分岐点だと、こども家庭庁は発信しています。
制度を通して社会全体で見守った子供たちが、やがて社会を支える担い手になります。
この子ども・子育て支援制度を通じて、社会保険について改めて考える機会としたいですね。
監修:ウィルレグルス税理士法人