【事例紹介】なぜ「普通の家庭」に相続税がかかったのか?一人っ子のAさんが直面した「想定外の課税」
「相続税は、一部の資産家や富裕層だけのもの」 と思っていませんか?
実は、「相続人が少ない」「都内に不動産がある」といった理由で、想定外の相続税がかかるケースがあります。
国税庁が発表したデータによると、令和6年分では亡くなられた方の約10人に1人(課税割合10.4%)が相続税の課税対象となっており、相続税は一般のご家庭にとっても身近なものになっています。
今回は、当事務所が実際に申告のご依頼を受けた「東京都23区のマンションを相続したAさんの事例」を元に、一般の方が陥りがちな相続税の落とし穴と注意点について、専門家の視点から分かりやすく解説します。
参考:国税庁「令和6年分 相続税の申告実績の概要」
1. 【事例】「相続税はかからない」と思っていたAさんのケース
まずは、当事務所へご相談にいらしたAさんのケースを元に、一部数字をわかりやすく加工してご紹介します。
<ご家族構成・状況>
被相続人(亡くなった方): お父様(23区の築40年以上のマンションに一人暮らし)
相続人: 子・Aさん(千葉県在住、持ち家あり)の1名のみ
相続した財産: 23区のマンション+ 預貯金(財産総額:4,200万円)
債務・葬式費用: 59万円
差し引き課税額の合計: 4,141万円
Aさんは「うちは普通の家庭で、相続したのは古い都内のマンションと預貯金だけ。相続税はかからないのでは?」と考えていました。
しかし、実際の税額を計算してみたところ、「54万1,000円」の相続税が発生することが判明したのです。
2. なぜ「54万1,000円」の相続税が発生したのか?
Aさんが「うちは大丈夫」と思ってしまった背景には、3つの落とし穴がありました。
落とし穴①:相続人が「1名」だと基礎控除額が少ない
相続税には、一定の金額まで税金がかからない「基礎控除」があります。
基礎控除額は以下の数式で計算されます。
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Aさんの場合、法定相続人は自分1名だけだったため、基礎控除額は 3,600万円となります。
相続人の数が少ないほど基礎控除額が低くなるため、税金が発生するハードルは下がってしまいます。
参考:国税庁「相続税の計算」
落とし穴②:都市部の不動産は、古くても評価額が思いのほか高い
近年、都市部を中心に相続税の基準となる「路線価(土地の評価額)」が高騰しています。
実際、千葉県内でも路線価は上昇傾向にあり(千葉市中央区富士見2丁目で前年比+8.5%、松戸市本町で前年比+12.8%)、全国トップの東京都中央区銀座5丁目は前年比+11.0%の上昇を記録しています。
Aさんのお父様が所有していたのは23区の築40年以上のマンションでしたが、結果としてAさんの相続した課税対象額は4,141万円 となり、基礎控除額の3,600万円を大幅に超えてしまったのです。
参考:国税庁「令和8年分都道府県庁所在都市の最高路線価」
産経新聞「千葉の路線価、13年連続プラス」(2026年7月1日)
落とし穴③:「小規模宅地等の特例」が使えなかった
「自宅を相続する際、一定の条件を満たせば土地の評価額を8割カットできる特例があると聞いた」という方もいるかもしれません。
これは「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」という減税制度です。
この特例を使えば、土地の評価額を大幅に下げて基礎控除額以下に収めることができる(=相続税がかからない)可能性があります。
しかし、この特例の適用を受けるためには複数の要件が定められています。
Aさんは「千葉県内に自分の持ち家を所有して暮らしており、お父様と同居していなかった」ため、この特例の対象外となってしまいました。
その結果、基礎控除額を超過した額に対して54万1,000円の相続税が課されることになったのです。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
3. 「小規模宅地等の特例」の適用条件
そもそも、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、「残された家族が相続税を納めるために相続した不動産を売却し、住む家を失ってしまうことを防ぐ」ためのものです。
この特例の適用を受けるためには、以下の①~③いずれかの条件を満たした上で、相続税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨を記載するとともに、一定の書類を添付する必要があります。
※以下は、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の中でも、「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」に関する条件を抜粋したものです。詳しくは国税庁のHPをご確認ください。
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「うちは特例が使えるから相続税はかからないはず」と自己判断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
特例が使えるかどうかは、事前に専門家へ相談し、正確な診断を受けると安心です。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
4. まとめ:事前の「試算」と「早めの対策」がカギ
今回のAさんの事例から学べるのは、「一般の方の相続税に関する知識」と「実際の課税実務」には大きなギャップが生まれ、想定外の課税が生じる恐れがあるということです。
さらに、令和8年度の税制改正では、「教育資金の一括贈与特例の廃止」や「貸付用不動産の評価見直し」など、早くから準備を始めた人が報われる傾向がより強まっています。
「我が家に相続税は関係ある?」と少しでも気になった方は、それぞれが置かれた相続の状況ごとに活用できる税制があるかどうかを専門家である税理士に相談したうえで、ご自宅やご実家がいくらの課税対象となるかをシミュレーションしてみることをお勧めします。
ウィルレグルス税理士法人では、松戸市・流山市・鎌ヶ谷市を中心に、豊富な実務経験を持つ税理士が、お客様一人ひとりに最適な生前贈与や相続対策のご提案をいたします。
どうぞお気軽にご相談くださいませ。
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監修:ウィルレグルス税理士法人